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東京地方裁判所 平成8年(行ウ)238号 判決

原告

喜多商事株式会社(X)

右代表者代表取締役

喜多正男

右訴訟代理人弁護士

河崎光成

萩谷麻衣子

被告

東京都中央都税事務所長 金木昇

右指定代理人

江原勲

若栗征宏

洗川文雄

事実及び理由

第四 当裁判所の判断

一  保有税の納税義務免除制度の趣旨及びその要件該当性の判断について

1  特別土地保有税は、土地の取得及び保有に伴う費用を増大させることにより、土地の投機的な取得を抑制するとともに、土地の供給を促進することを目的として創設されたものであるが、投機目的で取得され、保有されている土地か否かの判断が困難であることなどから、当初は、当該土地の利用の有無を問わず一律に課税されることとされていた。しかし、その後、既に社会通念上相当程度の水準に利用がされ、最終的な需要に供されていると認められるような土地についてまで、保有税を課すことは相当でないという考慮から、かかる場合には、いったん発生した保有税の納税義務を免除することとしたが、具体的な個々の土地について最終的な需要に供されているか、将来の売買を見越しての仮の需要に供されているにすぎないかの判断は困難であることから、その具体的な運用における恣意的な認定又は課税の不公平を避けるため、法六〇三条の二第一項は、確実に最終的な需要に供されていると認められるものを納税義務免除の対象とすることとしたのである。

2  したがって、保有税の納税義務免除要件のうち土地の利用状況については、基準日におけるその土地の外形的事実に基づいて客観的に判断すべきものと解するのが相当である。

二  本件各土地に法六〇三条の二の規定を形式的に適用することの違法性の有無等について

1  本件基準日当時、本件道路部分が私道の用に供されていたことは当事者間に争いがないから、本件道路部分は建物敷地又は特定施設供用地のいずれにも該当しない。

なお、原告は、本件道路部分が公共の用に供する道路として非課税とされるべきである(法五八六条二項二八号、三四八条二項五号)と主張するもののようであるが、非課税と納税義務の免除とは趣旨、目的を異にするものである上、免除申請は、既に認定を受けた土地に変更がない場合を除き、申請によることを原則とするものであり(法六〇三条の二第二項、条例一五三条の二第二項)、本件においても、原告は従前の認定に変更がないことを前提として、保有税の申告をしたものであり、本訴請求は納税義務免除の一部を不許可とした本件処分の取消しを求めるものであるから、非課税事由への該当性は本件処分の違法理由とはならないものと解される。

2  当事者間に争いのない事実等及び〔証拠略〕によれば、大野商店が本件対象部分を平成元年一月ころから資材置場等として利用し始めたこと、同年八月ころ原告が本件対象部分の公道及び私道に面した部分並びに本件立体駐車場の敷地に面した部分に本件工作物を設置したこと、平成二年一月一日から平成三年一月四日にかけて本件対象部分上にはほぼ同様の形状で資材等が散乱していたことが認められる。

また、本件対象部分については、前記のとおり、本件基準日当時、公道及び私道に面した部分に本件工作物が設置され、公道及び私道から直接車が出入りすることは不可能と考えられる状態にあったこと、本件立体駐車場は未だ完成していなかったこと、本件立体駐車場の敷地と本件対象部分の境界にも本件工作物が設置されて車が出入りすることは不可能と考えられる状態であったこと、本件対象部分にはその全体に建築資材等が散乱しており駐車場として利用し得る状況になかったことが認められ、以上によれば、本件基準日当時、本件対象部分が駐車場として利用され、その利用が相当の長期にわたると認められる状態にはなかったというべきである。

3  また、右に認定した事実によれば、本件基準日当時、本件対象部分の周囲には本件工作物が設置され、大野商店以外の者はもちろん大野商店が資材置場等として自由に利用することは不可能であり、現に利用してもいなかったことが認められ、右によれば、本件基準日当時、本件対象部分について資材置場等としての効用を維持するための管理が行われていると認められる状況にはなかったというべきである。

4  なお、原告は、本件対象部分のうち本件立体駐車場に面した一部分については、本件基準日の後である平成三年八月ころまでは本件工作物はなかったので大野商店は本件対象部分に自由に出入りしていたと主張するが、〔証拠略〕によれば、本件基準日以前から本件基準日後にかけて、本件対象部分と本件立体駐車場の敷地の境界には、本件工作物と推認される工作物が存在していること、また本件賃貸借契約に関する原告と大野商店との間の別件の民事訴訟の中でも大野商店は本件対象部分を資材置場等として利用できなかったと主張していることが認められるところ、前記のとおり平成二年一月一日から平成三年一月四日までの間に本件対象部分上に散乱していた資材等の状況が変化していないことからすれば、大野商店が本件対象部分に自由に出入りしていたという原告の主張を採用することはできない。

また、原告は、大野商店の不法占拠により、本件対象部分を原告が駐車場として利用することが妨害されていたとして、そのような状況の下で法六〇三条の二の規定を形式的に適用することは違法であるとも主張する。しかし、本件対象部分が免除土地となるか否かは、外形的事実に基づいて客観的に判断すべきことは前記のとおりであり、私人間の紛争における主張の当否、所有者等の思惑等、外形的事実を離れた個別具体的な事情については、考慮すべき事項に当たらないというべきであり、この点についての原告の主張を採用することはできない。

5  以上によれば、本件対象部分が本件基準日において、駐車場又は資材置場等としての特定施設供用地に該当しないとした本件処分に違法はない。

三  建物等敷地について

1  建物等敷地とは、当該建物等を維持し、又はその効用を果たすために使用されている土地をいい、建物等敷地の認定に当たっては、他の土地との区分が塀等により外観上明確であるときはこれによることが可能であるが、その区分が明確でない場合には、当該土地の具体的な利用状況により、当該建物又は構築物の敷地に相当する部分をその使用実態等に応じて認定することになる。

これを本件についてみるに、本件基準日当時、本件建物の周囲の土地である本件対象部分には、全体に資材等が散乱していること、本件対象部分の周囲は本件工作物で遮蔽されて公道及び私道から直接本件対象部分に出入りすることはできないこと、外部から本件建物に入るためには公道に面した本件建物の出入口を利用するしかないことは前記のとおりであり、〔証拠略〕によれば、本件建物の後部には勝手口様のものが存在するがその周囲には廃材等が散乱しており出入口として利用されている形跡はないことが認められ、以上によれば、本件建物の周囲の土地は本件建物を維持しその効用を果たすために使用されていないことは外観上明らかであるから、本件建物の周囲の土地が本件建物の敷地に該当するとは認められない。

なお、本件通達は、市街化区域における平面式駐車場、資材置場等の用に供する土地に係る土地利用計画適合性の判断の厳格化を推進するために制定されたものであり、建物の敷地の範囲、を定めたものではなく、そもそも本件対象部分は本件建物の敷地であるかが不明な土地ではなく、本件建物の敷地に該当しないことが外観上明らかな土地であるから、いずれにしてもこの点に関する原告の主張は失当である。

以上によれば、建物等敷地を本件建物の底地部分のみであるとした点において、本件処分に違法は認められない。

四  計算方法について

1  保有税は、基準日において、ある土地を保有していることを課税要件とするものであり、その取得価額の合計額である課税標準(法五九三条、五九九条二項一号、同条一項一号)に保有税の税率(一〇〇分の一・四。法五九四条)を乗じて得た額から、当該土地に対して課される固定資産税の課税標準となるべき価額に一〇〇分の一・四を乗じた額の合計額を控除した額が税額であるとされている。

ところで、保有税の納税義務の免除とは、保有税の課税対象となる土地のうち免除土地に該当するものがある場合に、当該免除土地に係る保有税に係る納税義務を免除するものであり(法六〇三条の二第一項)、当該免除土地について保有税を発生させないというものではなく、いったん発生した保有税につき、その納税義務を免除するものである。そして、当該免除土地が一区画を形成する一筆の土地であるときは、保有税の税額の算出方法に準じて、当該免除土地に係る保有税の額を算出することができるが、保有税の対象となる一筆の土地の土地の一部が免除土地に該当するときは、まず、当該一筆の土地について発生する保有税額を算定し、これに免除土地の一筆の土地の面積に対する割合を乗じた金額をもって、当該免除土地に係る保有税額と解するほかない。そうすると、同様の計算方法によった本件処分には計算方法の点で違法はなく、原告が主張するように免除土地の取得価額に保有税の税率を乗じた額から、免除土地を一画地とみて新たに固定資産税の課税標準となるべき価額を算出してこれに一〇〇分の一・四を乗じた額を控除するという計算方法をとることは予定されていないというべきである。

2  これに対し、原告は、一筆の土地の一部に保有税についての規定が適用されない土地(法五八五条三項。以下「非適用土地」という。)が含まれている場合には、当該土地の取得価額が一筆の土地の取得価額に算入されないこととされていることとの均衡上、免除土地についても同様に計算すべきものと主張するようであるが、土地の一部に非適用土地が含まれている場合には、当該非適用土地を除いた部分のみが保有税の課税対象となるのであるから、その取得価額の算定方法において当該非適用土地の取得価額が算入されないのは当然であって、このことから納税義務が免除されるべき保有税額を同様の計算方式によるべきことにはならない。

第五 以上によれば、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担については、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 富越和厚 裁判官 團藤丈士 水谷里枝子)

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